中小企業のための知的資産経営シンポジウム

2010年11月30日(火)、東京千代田区の日経ホールで
日本行政書士会連合会と東京都行政書士会が主催で
「知的資産経営WEEK2010~中小企業のための知的資産経営シンポジウム」が
行われ、私も聴きに行って参りました。

連合会長 北山氏の挨拶と
来賓として経済産業省の知的財産政策室長・中原裕彦氏が挨拶。
その後、神戸大学名誉教授 古賀智敏氏が基調講演。

知的資産経営とは何かから始まって
「知的資産経営報告書」という大雑把に言えば
自分の会社についての強みや特色、弱みを捉えるために
あらゆる面から自社についてたな卸しして
整理する書類の作成について述べられました。

会社の状況を見る、というと財務諸表などの各種会計
書類を見ることが一般的ではないかと思いますが、
この知的資産というのはそこには表れない
事業や会社を捉えるためのもっと広い概念です。

この書類そのものは、例えば「どこか省庁に提出しないと
許可がとれないor○○できない」というものではないので
おそらく毎日目の前のことをこなすのに精一杯で
心にも財政的にもわが社は余裕がないよ~~という
会社だと、なかなか食指が動かないものでは、という
気はしました。

しかし、この後のパネルディスカッションでは
この「報告書」を実際に作った経験がある
滋賀県中小企業団体中央会の中嶋さんが、
農家でも作ったところがある、とおっしゃって
いました。
自分の会社/事業がよいほうへ向かっていっている
のか、強みや売りはどこなのか、どこが改善すべきなのか
それを知りたい事業者にとっては大切なのだと思います。

また、作る過程では外部に丸投げであってはならず、
社長、そして可能であれば従業員も関わって作るほうが
効果的だそうです。
おそらく、報告書ができる、ということよりも
報告書を作る過程が大事なのでしょうね。

考えてみれば、大学生が就職活動するときに
自分の今までの人生をたな卸しするのに
自己分析なんてやってみるんではないかと
思うのですが、それを事業や会社に対して
やっているような感じなんでしょうね。

パネルディスカッションでは、実際に会社経営をしている
代表取締役や取締役の人二人も参加していましたが、
やはり現場で思考錯誤してきた人の言葉は具体的で
力、重みがあります。

淡路島でホテル業を営む立石裕明氏は
阪神淡路大震災で、その頃経営していたホテルに
大損害を受け、そこから挽回するのには
その頃ホテル業界では「もうからない」と常識であった
スポーツ選手の大会や合宿を受け入れる事業を手がけて
そこから現在に至っている方でした。

とにかく大打撃を受けたことがなかったら、そういう
発想もなく、ここまでこれなかっただろう、と。
なんだかコンサルタント・講演者の栢野克己さんが喜んで紹介しそうな
事例の方ですね(すでにどこかで接点があるかもしれませんけど)。
しかし、この社長は、スポーツ合宿などのお客を
集めるだけでなく、自らスポーツ大会も地元に誘致して
しまうのだからダイナミックです。

もう一人の取締役の方は山岡製作所の横田吉男氏。
義父の稼業を手伝っていたのをやめて、中途入社で
その後昇進を重ねて今にいたるサラリーマンではありますが、
知的資産がらみで会社をよりよくする制度を作った
動機を掘り下げてみると、具体的な理由があります。

中途で入社した横田氏は、最初は工場のようなところに
配置されて実際に作業を始めるのですが、どうしても
うまくできず、部品を失敗していくつも壊してしまう。
それを見て、目上の工員が「君は下手だからもうその作業は
やらんでいい」と言う。しかし、これをやらなかったら
自分は会社にいられないのではないいか?

そう危機感を覚えて、横田氏は本屋で関連書籍を探し
見つけたそうです。それを読んでみると、なんと口で
説明すれば1分間で済んでしまうぐらいの内容。
そのコツを頭に入れてやったら、同じ作業が失敗せずに
できてしまった。

この経験から、できないことは教えてやる、そういう事が
会社全体としては大事なのではないか、と身にしみて、
それ以降昇進して自分の部下を持ってからは
部下には出し惜しみせず全てを教える方針でやってきたとの事。

一般的に職人の世界は「教わるのではなく盗め」と自主的に
やることを求められる土壌があったということなのでしょう。
それが会社としては弊害である、と実感したということ
なんですね。

お二人とも何か考えざるを得ないような具体的な
物事があって、そこから改善や創造が始まって
いるんだな、と感じ入るお話でした。

知的資産のあり方として、何かメソッドがあって
それをただ実行すればよいというのではない、
その会社独自の文脈の中でノウハウはできていく
し蓄積していくというようなお話もあったのですが
まさにこの二人の経営者の体験談が物語っている
ように思います。

ビジネスと学術的な内容のシンポジウムなのですが
予想外に感動してしまった会でした。

この日の参加者
基調講演 古賀智敏氏(神戸大学名誉教授、同志社大学特別客員教授)
パネルディスカッション
司会     内田恭彦氏(山口大学教授)
パネリスト  中森孝文氏(立命館大学准教授)
       中嶋和繁氏(滋賀県中央企業団体中央会)
       横田吉男氏(㈱山岡製作所取締役)
       立石裕明氏(㈱アテーナホテルズ代表取締役)
       江端俊昭氏(行政書士)

コメント

はじめまして

滋賀県で知的資産経営の支援をしている行政書士の中島と申します。

たまたまこのブログを発見しましたので、ご挨拶も兼ねてお邪魔しました^^;

馴染みの方ばかりがパネラーに登壇されていたので、参加していました。

中森先生は師匠ですし、古賀先生、内田先生は知的資産経営研究会でもお世話になっているんです。

そして滋賀県中小企業団体中央会の中嶋さんにも非常にお世話になっています。

実はその農業者の事例も、中央会の中嶋さんからご依頼を受けて、僕たちが作成支援させて頂きました。(同じナカジマですけど(笑))

小国様が仰るように、報告書を作る過程が大事になってきますし、作成してから、というか途中段階から喜ばれることが多いです。

関西では知的資産経営は活発ですが、これを機に関東でも広がることを期待しています。


ちなみに、栢野克己さんも何度かセミナーの主催をさせて頂いた事があります^^

2011年01月23日10:05 from中島@エフォート URL Edit

コメントありがとうございます

中島様

コメントありがとうございます。
あのシンポジウムで実例として出されていた
ケースを扱っていらしたんですね!
この報告書を作成するような会社というと
なんとなくある程度大きな規模の会社ばかりなのかな
と思っていたので、農業界で活用例があるというのは
とても新鮮な印象を受けたのを覚えています。

栢野さんのセミナーは偶然ですがほんの2日前に
初めて参加してまいりました。
いろんな価値観の方がいらっしゃるので
視野が広がりますね。


2011年01月24日11:07 from小国香織(管理人) URL Edit

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